小松亮一のコラムBOX 01'7月

 

The master-songs are ended, and the man
That sang them is a name. And so is God
A name; and so is love, and life, and death,
And everything. But we, who are too blind
To read what we have written, or what faith
Has written for us, do not understand:
We only blink, and wonder.

(巨匠の歌はやみ、それを歌った詩人も
いまやただの名にすぎない。そして神も
また名だ、愛も人生も死も、すべてそうだ
われわれは盲いて、みずから書いたものを
読むことができない。また信念がわれわれのために書き記したものを悟ることもでき
ない
わずかにのぞき見て、いぶかるだけだ。)

  E.A.Robinson 「The Children of The Night」
E.A.ロビンソン 「夜の子ら」 1897
                   より一部抜粋

 
 暗い詩だと思う。これはちょうど100年くらい前の世紀末に書かれた詩だ。アメリ
カでは有名なホイットマンという詩人が死んじゃったらしくて、みんなそれまではホ
イットマンの真似みたいな詩を書いていたんだけど、だんだんこんなのがおおくなっ
てきたみたいです。
 僕には信仰心というものはないから、神の存在が感じられないというのが一体どん
な心境なのかは肌で感じることは出来ないけれど、物だけが確かな存在であるかのよ
うに感じる気持ちは現代人としてよく理解できる(もっとも今はそれが当然だという
意識があり、物以外に確かなものなんてあるのかよ、という答えが返ってきそうであ
るが)。
 「いまやただの名に過ぎない」ということは「名」というものは「存在」ではない
という意味になる。名前だけが存在するということは、存在していないことと同義で
ある。「愛」も「人生」も「死」も存在しない。全ては空っぽであり、言葉からは何
のリアリティも伝わってこない。ただ、存在するのは目の前にいる恋人であり、終
わっていく今日という時間であり、また墓に打ちこめられた親族の名前に過ぎない。
 確かに今まで存在したはずの「神」に対するリアリティはどこかに消えてしまい、
疑いの念だけがこみ上げてくる。そんな人にもはやホイットマンのような詩は書けま
い。僕が今からサンタクロースの存在を心から信じて詩を書きなさいと言われても、
書けるわけがない。書いたとしてもつまらないものになるだろう。それを自覚しない
人間がたくさんいるのでそうやって、くだらない三流の童話が世の中に生まれるので
あろう。
 信じているつもりにならなくていいと思う。疑うことすら信じることの過程にすぎ
ないのだ。 

 

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