小松亮一のコラムBOX 01'12月

 

 詩人は壁、それも切り立つような絶壁を凝視する人である。本当のことを言えば、
彼にはそれをどうしたら乗り越えられるかということしか念頭にない。その困苦に打
ち勝つためには、人間としての全ての能力が必要である。能力が必要なばかりではな
い。あてにすることはできないが、運というものもなければならないだろう。
 彼はただ、自分自身を救うためにのみ、自分の仕事に没頭する。しかし、自分自身
を救いうるものなら、かならず他の人間をも救いうるはずだ。それがいささか単純な
彼の信条である。
 「自分に近づくことによって人類に近づくことができる。」というローレンス・ダ
レルの言葉は、詩(文学)の世界においては矛盾ではなく、文字どおり真実である。

                  鮎川信夫
             (「東京新聞」1960・8月29日)


 彼は詩人のマスコミに対する姿勢には2つあるといっている。1つはマスコミの中に
入っていくことで、もう一つは「マスコミを念頭におかずに、極端に表現を個性化し
てしまう場合」だという。
 前者は世界と結びつきを求めることは喜ばしいが、その結びつきが表面的になるこ
とも事実だといい、後者は生きた世界と接触を失う危険があるといっている。
 世界に結びついていることが重要だと彼はいう。そのためには自然の一部となれと
いう。
 幸い僕達は生きていくために何もしなくていいほど、恵まれてはいない。生きてい
くためには働かなければならないし、社会に出て行かなければならない。人はそれを
面倒なことのように思うかもしれないが、これは一つの大事なチャンスなのかもしれ
ない。インターネットをつなぐにも僕らは世界で働いているのである。
 個人として働き、個人として詩を書いている、そのことが結果として世界とつな
がっているのだと僕は思いたい。
 決して、颯爽とTVに登場して、自ら詩人を名乗っては、言いたいことを言いたいよ
うに言って、私は日本人全てとつながっている、と堂々と喋るような人が「人類に近
づくことができる」人間だとは思いたくない。
 彼はこうも言った。「理知の革命は比較的容易だが感情の革命は容易ではない。そ
のことをいちばんよく知っているのが詩人であるはずだ」と。
 


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